背景

空気中に飛散、浮遊している微生物には、ウィルス、細菌、芽胞菌、真菌などがあり、免疫機能低下者だけで無く一般健常者にとっても感染症をひきおこす原因として知られています。この感染症を防ぐ方法に、現在広く普及しているのは高性能フィルター、通称HEPAフィルターを使った濾過捕集(除菌)があり、感染対策排気ユニット、又は感染防止空気清浄機といった装置として病院等で導入されています。
しかしこうしたHEPAフィルターによる感染防止策には、いくつかの問題点がありました。

HEPAフィルターによる感染防止策の問題点
  • フィルターは必ず目詰まりが起きるので、定期的交換が必要
  • ウィルスや細菌が捕集されているため、専門業者による安全管理されたフィルター交換が必要でメンテナンス経費がかかる
  • 捕集したウィルスや細菌は生きたままなので、フィルター交換が遅れると繁殖・増殖の危険性がある

こうした問題点を解消する方法として、古来伝染病が発生すると全て焼却して感染の拡大を防いだ故事に習い 加熱による微生物殺滅のための、滅菌装置の開発 が1998年に始まり、中小企業創造法に基づく補助金を受け、ヒーター開発を開始し、翌年1999年に3Dヒーター開発に成功しました。その後、排出空気温度を冷却するための熱交換器の開発をすすめ、2003年にパーフェクトクリーン1号機を発表。びわ湖環境ビジネスメッセ 2003 へ出展し、その反響を背景に、聖マリアンナ医科大学病院への導入が実現しました。

その後、海外展示会での発表や滅菌装置としての実力評価を受けるための情報収集を展開しました。2009年度に独立行政法人科学技術振興機構の地域ニーズ即応型助成に、京都府立医科大学と応募し採択され、400℃以上での芽胞菌滅菌に成功しました。(下記実験資料参照)その後、2011年京都府中小企業技術開発促進事業の助成を受け、パルブラットの平坦化と新型の空冷式熱交換器や動力系の新技術を集めた、新しいパーフェクトクリーンを開発すると同時に、本格的製品化に向けての様々な技術的課題をクリアーするために、学術及び関連業界関係者による「焼却滅菌研究会」を発足し、製品事業化に向けた諸活動を推進中です。

京都府立医科大学との共同事業

滅菌性能の実証実験

  1. 実験に使用する菌の選定

    微生物の選定条件

    1. 空気感染を起こすサイズ 5μm以下
    2. 乾燥状態でも生存できる。
    3. 感染した場合でも病気に関連しない。
    4. 飛散しやすい。

    以上の条件を満たす菌として
    Bacillus subtilis natto (工業用納豆菌芽胞)
    1g当たり109程度の菌数(発育芽胞数)
    を選定した。

芽胞菌を含有するデンプン粒子の電顕像と粒子内の芽胞菌

  1. 実験モデルの構成

    焼却滅菌の実験モデルは以下の構成

    1. 芽胞を空気中に飛散させる装置
    2. 飛散した芽胞を焼却する滅菌装置(3Dヒーター
    3. 芽胞を回収する装置
    4. 回収した芽胞を定量培養し計測

    以上の構成で実験を行った。

実験モデルの構成図

  1. 滅菌実験と芽胞菌の数

    滅菌装置は以下の条件で稼働させた

    • 3Dヒーターの加熱範囲:室温から600℃以上
    • 芽胞が加熱殺菌ヒーターを通過する時間:1秒未満

    3Dヒーターは7段階の温度で、回収した芽胞菌数は

    • 室温:107
    • 200℃:107未満
    • 250℃:106未満
    • 300℃:102~3
    • 350℃:芽胞菌は発育せず
    • 400℃:芽胞菌は発育せず
    • 600℃:芽胞菌は発育せず

    で、結果350℃以上で完全に滅菌できることが判明した。

3Dヒーター通過後の菌数グラフ

製品化に向けたプロトタイプ機制作

  1. プロトタイプ機の構成

    3Dヒーターと空冷式熱交換器システムを組みあわせたプロトタイプ機を製作した。

    • ヒーター部:3Dヒーター
    • 触媒:脱臭用触媒処理をした3Dパルブラット
    • 熱交換器:空冷式熱交換システム
    • 動力部:ポンプ、モーター、電気制御部など

プロトタイプ機の構成図

  1. プロトタイプ機での熱交換性能試験

    3Dヒーターと空冷式熱交換器システムを組みあわせたプロトタイプ機で、滅菌温度400℃以上を確保した熱焼却された空気が、取り入れ温度プラス2度で排出できた。

プロトタイプ機での熱交換性能試験グラフ